悪性腫瘍と共に暮らしている愛犬の食事

愛犬に悪性腫瘍が見つかって・・・。と、低く静かなお声のお問合せには、私も心が締め付けられます。何がいけなかったのか・・・と、ご自分を責めてしまわれたり、これから先、この子がどうなっていくのか・・・というご不安、今の治療の他にできることはないのか・・・など、さまざまな思いがおありだと思います。

愛犬の腫瘍レベルや発病場所、年齢や健康状態、主治医の方針などによって、治療方法はいろいろのようですが、これからは「予防のための食事」ではなく、「治療のプラスになる食事」を考える必要があります。

エネルギーとQOLを高める食事

「治療中のプラスになる食事」とは、投薬中の薬との相性を考えながら、しっかりとしたエネルギー吸収ができ、QOL(クオリティ オブ ライフ)を高める食事だと思います。

・炭水化物

ガン細胞は炭水化物(ブドウ糖など)をエネルギー源にし、最終的に乳酸を産生します。乳酸は体内で再びブドウ糖に還元されるのですが、この還元作業に結構なエネルギーが必要なため、体からエネルギーが奪われないように、炭水化物(ブドウ糖など)の多い食事は控えた方が良いと言われています。

よく、糖がガン細胞の栄養になるから、糖質制限をした方が良いという話も耳にしますが、糖を食べたガン細胞がどんどん大きくなっていくわけではないんですね。また、栄養になるということも、実際にはまだ確認されてはおらず、糖質制限の食事も、治療にプラスになったという臨床的な効果もまだ見つかっていないようです。

さて、体の中ではガン細胞だけでなく、正常な細胞も糖をエネルギー源としていますから、あまり糖質制限をすると、正常な細胞も活動するエネルギーが足りなくなってしまいます。

すると、体はエネルギーを補充するために、筋肉を分解して糖を作り出します。結果的に痩せてしまい、体力がなくなり、悪性腫瘍と闘うことができなくなってしまいます。

悪性腫瘍が原因で痩せてきたお子は、ごはんでも、ケーキでも、ジャンクフードでも、アイスクリームでも、その子が好きで口にできるものなら、何でもいいので食べさせて、しっかりエネルギーを摂取して、おいしく食べてご機嫌さんになった方が、結果的に良いのではないかと思います。

・β-グルカン

弊社では、悪性腫瘍のお子には、元気ごはんの素の白米の部分を、大麦とオートミールに変更してお作りしています。

大麦、オートミールに多く含まれている「β-グルカン」は、ガン細胞を攻撃することができる免疫細胞を活性化させる働きがあり、腫瘍抑制効果が認められています。β-グルカンを積極的に食べることによって、愛犬自身の免疫応答を高めることができるので、悪性腫瘍に立ち向かう体を作ることができるのではないかと思います。

きのこ類にも多く含まれていますので、きのこご飯にしていただくと、応援倍増だと思います。

・タンパク質

ガン細胞には、タンパク質(アミノ酸)も必要です。タンパク質(アミノ酸)が足りなくなってくると、身体から必要なアミノ酸を奪い取ってきます。すると、痩せたり、免疫機能や消化機能が落ちたり、傷の治りが悪くなったりします。

ですので、悪性腫瘍を発症したら、特に良質なタンパク質を食べる必要があります。ガン細胞の増殖を抑えたり、ガン治療の副作用を軽減したりする効果を持つと言われているアミノ酸は、「アルギニン」「グルタミン」「グリシン」です。

上記3つのアミノ酸は、大麦・あずき・きなこ・インゲン豆・肉・魚・パスタ・マカロニ・小麦・米味噌・チアシードに高い含有量があります。トッピングや、おやつさんに使うといいですね。

・脂質

オメガ3脂肪酸は、ガン細胞の成長や転移を抑制して、免疫力を増強する効果などがあると考えられています。食事に油分を加える際には、オメガ3脂肪酸の多いサーモンオイルや亜麻仁油が適していると思います。

・まとめ

悪性腫瘍の診断を受けたら、主治医と治療方針を決め、毎日の食事は、お薬との相性をみながら、ガン細胞以外の愛犬の細胞を元気に保ち、免疫力を高める食材を提供しましょう。

抗がん治療を頑張っているお子、漢方や鍼、高額なサプリメントを頑張っているお子、抗がん治療を終わってからの寛解後の再発で、もう好きにさせようという方針のお子などへ、食事やハーブのご提案をさせていただいておりますが、

最初にご相談をお受けしてから、かれこれ3年から5年以上、同じお子のオーダーをお受けし続けているケースが多いことを鑑みますと、

悪性腫瘍を持ったままでも、ご機嫌さんに、長く生きてくれるんだな〜と、しみじみ思います。(たまに、突然腫瘍がなくなった!という、嬉しいご報告もいただきます。)

ご機嫌さんで、目をキラキラさせて「これ、これ!」と食べてくれる食材であれば、悪性腫瘍があるから、これを食べちゃダメ!というものは、実際、ないと感じています。

愛犬にとって心地よいことを優先していく先に、QOLの向上があり、元気度の高い細胞が、ガン細胞を静かに包み込んでくれるよう、祈っています。

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