愛犬のワクチン対策

動物病院から「ワクチン接種のご案内」が届く季節になりますね。もうお外を歩いていないのに、ワクチンって打たないといけないの?とか、色々と疾患を抱えているから負担になるんじゃないかと心配で・・・など、ワクチン接種に対するあれこれのご相談も多くなってまいります。

そこで今回は、ワクチンについて考えてみたいと思います。愛犬の健康状態や暮らし方に合ったワクチンの種類、接種するしないを、担当獣医さんと話し合うきっかけになればと思います。

ワクチンの種類

大きく分けると、案内が来るワクチンは3種類に分類されます。

  • 狂犬病ワクチン
  • コアワクチン
  • ノンコアワクチン

狂犬病ワクチンは法律で定められている義務(獣医師の判断により免除可能)。

コアワクチンは、義務ではないけれど、罹患すると死亡率が高い病気を予防するもので、ドッグランやホテル、トリミングなどで接種証明書の提示を求められるやつ。

ノンコアワクチンは、コアワクチンの感染症ほど危険性は高くないけれど、多頭飼いなどで、通常よりも感染リスクが高い場合に、ワクチン接種を勧められることがあるやつ。です。

狂犬病ワクチン

狂犬病は、人間も含む哺乳類全て(鳥、猫、犬、狐、狸、コウモリ、リス、牛や豚たちなどなど)がかかる病気で、狂犬病ウイルスに感染した哺乳類の唾液を経由して、傷口などから感染します。感染すると、ほぼ100%死亡します。

日本の飼い犬は、生後3カ月以降のすべての犬に対して、年1回のワクチン接種が法律で義務付けられています。

ただ、1歳未満の子や10歳以上の子や小型犬で副作用や死亡例が確認されていて、過去に狂犬病ワクチンで重い副作用(顔面の腫れ、蕁麻疹、呼吸困難、痙攣)が出た子や、接種することによって、生命や健康に危険を及ぼす可能性が考えられる場合は、獣医師の判断により免除されます。

免除した場合、必要なら「狂犬病予防注射実施猶予証明書」というのを出してもらうことができます。

コアワクチン

病院によって違いがあるかもしれませんが、犬ジステンパーウイルス・犬パルボウイルス・犬伝染性肝炎・犬アデノウイルス2型の混合ワクチンになっていることが多いです。

子犬の時に、3回打ってもらうやつです。1回目が6〜8週齢、2回目が4週後。3回目が16週齢以降になるようにスケジュールされています。

犬ジステンパーウイルスは、空気または飛沫によって感染します。
母親からの移行抗体がなくなる時期の子犬(生後6~12週程)で、感染の危険性が一番高まり、感染すると死亡率が高いです。

犬パルボウイルスは経口感染します。母親からの移行抗体がなくなる時期の子犬(生後6~12週程)で、感染の危険性が一番高まり、感染すると重症化し死亡することもあります。子犬がたくさんいる場所などでの感染率が高く、人の服や手に付着したウイルスからも感染することがあるようです。

犬伝染性肝炎は、犬アデノウイルス1型の経口感染で起こります。感染している犬の尿・唾液などの分泌物が、口の中に入ることによって感染し、1歳未満の子犬が発症すると重症化し死亡率が高いです。

犬アデノウイルス2型は、口や鼻から感染します。犬同士が密になっている場所(ペットショップやペットホテルなど)で短期間に蔓延することがあるようです。呼吸器の病気で、他の細菌やウイルスなどの感染も一緒に起きると重症化し、肺炎になることもあります。

コアワクチンは効果が長持ちすることがわかっていて、3年に1回の接種が推奨されていますが、コアワクチンを接種した後に、これらのウイルスに対する抗体がついたかどうかは、犬の個体により異なります。

1年持続しない子もいれば、3年間持続する子もいれば、一生持続する子もいます。大人になってからコアワクチンを接種する場合は、ウイルスに対して抗体を持っているかどうかを検査して、抗体を持っていないウイルスのワクチンだけを単体で接種してもらうことも可能です。

ノンコアワクチン

犬パラインフルエンザ・犬コロナウイルス・犬レプストピラ(2種類)の混合ワクチンになっていることが多いです。生活環境やライフスタイルに合わせて必要になるワクチンです。

犬パラインフルエンザは、感染した犬の咳やくしゃみなどの飛沫物によって感染します。症状は軽いとされていますが、他のウイルスや細菌などの病原体と混合感染すると症状が重くなります。集団で暮らしている場合に、感染率が高いようです。

犬コロナウイルスは、子犬が感染した場合、激しい胃腸炎を起こし、ひどい場合には死に至ることもあります。また、犬パルボウイルスと混合感染することが多く、その場合はより重篤な症状となり、死亡する危険性がより高まります。大人の犬は、感染しても症状が出ないことも多いようです。

犬レプストピラは、ネズミなどの野生生物が主な感染源と考えられていて、人も感染します。感染した動物の尿などに汚染された土壌や水から感染します。感染しても、症状が出ないことも多いようですが、症状が出る場合は、肝臓や腎臓に障害が現れやすく、死に至ることもあります。

ノンコアワクチンは、狂犬病ワクチンと同様、効果が長持ちしないことが知られていて、1年ごとの摂取が奨励されています。しかし、トリミングやペットホテル、ドッグランやお散歩に行かない子は、他の動物のおしっこの匂いを嗅いだり、汚染された土壌に触れたり、水たまりに入ったりすることはないのですから、獣医師さんと相談して、摂取するしないを決めるといいと思います。

ノンコアワクチンも、1年以上持続する子もいるので、抗体検査を受けて、抗体を持っていないウイルスのワクチンだけを単体で接種してもらうことも可能です。あるいは、その地域で流行っていないウイルスは接種を見合わせ、流行っているウイルスのみを接種するという考え方もあります。

まとめ

ワクチンには、罹患した場合に重篤になってしまうことを防ぐ役割や、罹患していても症状が出ていない場合に、その子の糞尿や飛沫などで他の子を罹患させてしまう危険性を予防する役割があります。

しかしながら、ワクチン接種に不安がある場合は、不安を抱えたまま、毎年、案内通りに混合ワクチン全てを接種するのではなく、担当獣医さんに「不安の内容や思っていること、愛犬の体調や生活状況」をきちんと説明し、

抗体検査を受け、必要だと思われるワクチンのみを接種したり、ワクチン接種自体を免除してもらう方法もあります。

ペットホテルやトリミング、ドッグランで必要な「ワクチン接種証明書」は、言ってみれば、接種した後に抗体ができているかどうかの証明ではありませんよね。それに比べ「抗体検査証明書」は、確実に抗体があるってことの証明です。

抗体検査を受け、抗体のないワクチンのみを単体で接種したという証明書や、抗体証明書、あるいは狂犬病の免除や、過去に副作用が出たためワクチン接種を控えたという書類を用意しておくことは、災害時の避難の際にも心強いものになるはずです。

ワクチンを接種する前に、健康診断を受けると思いますので、ワクチン接種に不安がある場合は、担当獣医師さんと相談し、「うちの子のワクチン対策」を一緒に考えてみられてはいかがでしょうか。

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